米国株偏重見直し|2026投資戦略で考えるEAFE分散と新興国投資リスク5つ

投資戦略

2026年に向けて最も重要なのは、米国株偏重の見直しを行い、米国以外を意図的に組み込むことです。

本記事では、S&P500の「マグニフィセント・セブン」が指数の約34%を占める集中度(2025年夏、Reuters)やS&P500の12カ月先予想PERが22倍台、MSCI EAFEが15倍台、MSCI EMが13倍台というバリュエーション差(2025年秋、FactSet/MSCI)を示し、比率上限・リバランス・為替・新興国リスク管理を含む実行可能なルールについて解説します。

2026年の投資戦略で米国株偏重の見直しが重要な理由

S&P500や全世界株式への積立投資を続けていると、本当にこのままで良いのか不安になる瞬間がありますよね。

特に2026年を見据えたとき、これまで好調だった米国株が抱える「集中リスク」「割高感」という2つの課題を直視することが、ご自身の資産を守る上で非常に重要になります。

ここでは、多くの方が分散投資のつもりで見過ごしているS&P500に潜む少数銘柄への「集中」という実態と、客観的な指標であるPER(株価収益率)で比較する米国市場の「割高感」の2つの側面から、なぜ今ポートフォリオの見直しが必要なのかをデータに基づいて解説します。

これらの事実を知ることで、なぜ米国以外の地域へ目を向けるべきか、その理由が明確になるはずです。

S&P500に潜む少数銘柄への「集中」という実態

「S&P500」は米国の代表的な500社に投資する指数ですが、その仕組みは「時価総額加重平均」という方式です。

これは、企業規模(時価総額)が大きい企業の株価が、指数全体に与える影響も大きくなることを意味します。

つまり、500社へ均等に分散されているわけではありません。

実際に、2025年7月時点では「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる巨大IT企業群だけで、S&P500全体の約34%を占めるというデータもあります。

これは、S&P500に投資しているつもりが、実質的にはごく一部の巨大IT企業の業績に資産の行方を大きく委ねている状態と言えます。

「隠れた集中」は、好調なうちは資産を大きく増やしてくれますが、一度風向きが変わればポートフォリオ全体が大きな打撃を受けるリスクをはらんでいます。

分散投資の本来の目的であるリスク低減効果が、十分に機能しない可能性があるのです。

PER(株価収益率)で比較する米国市場の「割高感」

もう一つの重要な視点が、株価の割安度を測る指標です。

ここで用いるのが「PER(株価収益率)」で、これは企業の稼ぐ利益に対して株価が何倍まで買われているかを示します。

一般的に、この数値が高いほど「割高」、低いほど「割安」と判断されます。

2025年秋時点のでは、S&P500の12カ月先予想PERは22倍台と、過去の平均や他の地域と比較して高い水準にあります。

一方で、欧州や日本など米国以外の先進国や、成長が期待される新興国のPERは、米国市場に比べてかなり低い水準で推移していることがわかります。

現在の米国株の高いPERは、それだけ将来への成長期待が株価に織り込まれている証拠とも言えます。

しかし、裏を返せば、今後の上昇余地が限られる可能性や、何らかの悪材料が出た際に株価が大きく下落するリスクを抱えている状態なのです。

EAFEと中国・日本の役割で考えるポートフォリオ分散

ポートフォリオの分散を考える上で最も重要なのは、各資産に明確な「役割」を持たせることです。

なぜなら、役割を決めずにただ投資先を増やすだけでは、管理が複雑になるだけで効果的なリスク分散にはつながらないからです。

米国以外の分散先として有力な日本、欧州、中国について、それぞれ「安定感を担う日本株」「配当や世界企業が魅力の欧州株」「ポートフォリオの補助役として考える中国株」という役割で具体的に解説します。

これらの地域特性を理解し、ご自身のポートフォリオにどう組み込むかを考えることが、米国株偏重から脱却する第一歩になります。

安定感を担う日本株の投資テーマ

日本株が担うのは、ポートフォリオの安定感を高める役割です。

海外投資家が日本株に注目する理由の一つに「コーポレートガバナンス改革」があります。

これは、企業が株主をより意識した経営を行うように促す、東京証券取引所主導の大きな動きを指します。

この改革を背景に、企業が株主還元(増配や自社株買い)を積極化させています。

実際に、2024年度の主要企業の配当総額は過去最高の約15.9兆円に達する見込みとなり、株価を下支えする要因になっています。

日本株は守りの側面だけでなく、国内独自のテーマ性から米国株とは異なる値動きが期待できるため、ポートフォリオに安心感をもたらす重要な存在です。

配当や世界企業が魅力の欧州株(EAFEの中心)

次に、日本と同じく米国以外の先進国市場を代表する欧州株です。

EAFE(イーファ)とは、ヨーロッパ(Europe)、オーストラレーシア(Australasia)、極東(Far East)の頭文字を取った株価指数で、北米を除く先進国の株式市場の動きを示します。

欧州には、ロレアル(フランス)やネスレ(スイス)、ASML(オランダ)など、世界中で高いブランド力と収益性を持つグローバル企業が数多く存在します。

これらの企業は、安定したキャッシュフローを背景に高配当を維持する傾向があり、MSCI Europe指数の配当利回りは約3%台と、S&P500の約1%台を大きく上回る水準で推移しています。

安定したインカムゲイン(配当収入)を狙いながら、世界経済の成長を取り込みたい場合、欧州株はポートフォリオの中核を担う有力な選択肢となります。

ポートフォリオの補助役として考える中国株

最後に中国株です。

中国株は、政府の突然の規制強化や米中対立といった「地政学リスク」が常に意識されるため、投資の難易度が非常に高い市場といえます。

リスクが大きい一方で、株価が大きく売られてきた結果、MSCI China指数の予想PERは10倍前後と、他の主要市場と比較しても極めて割安な水準にあります。

政府による景気刺激策への期待もあり、短期間で大きなリターンが生まれる可能性も秘めています。

中国株は、あくまでポートフォリオの補助的な役割と割り切り、資産のごく一部で大きなリターンを狙う「サテライト戦略」の一環として検討するのが現実的な付き合い方です。

2026年の投資戦略で考える新興国投資の主なリスク5つ

新興国投資は高いリターンが期待できる一方で、先進国への投資とは質の異なるリスクが存在します。

その中でも、資産を守るために必ず理解しておくべき5つの主要なリスクを把握することが、失敗を避けるための第一歩となります。

通貨下落のリスク、政治・規制の不透明さ、流動性の問題、特定の国に資産が集中するカントリーリスク、そして米国の金融政策という外部要因は、新興国投資の成否を分ける重要なポイントです。

これらのリスクを無視して大きなリターンだけを追い求めると、資産を大きく減らすことになりかねません。

だからこそ、低い比率から始めるという基本戦略が有効になるのです。

先進国より影響が大きい通貨下落という懸念

新興国投資における通貨リスクとは、投資先の国の通貨価値が、日本円に対して下落してしまうことを指します。

たとえ現地通貨建ての株価が10%上昇しても、通貨価値が20%下落すれば、円換算では約12%の損失が発生します。

新興国の通貨は、経済基盤の脆弱さや政治の不安定さから、米ドルや円といった先進国の通貨に比べて変動が非常に大きくなる傾向があります。

この為替変動こそが新興国投資のリターンを大きく左右する要因であり、株価の動きと同じくらい注意深く見るべきポイントです。

突然のルール変更も起こり得る政治や資本規制

政治リスクや資本規制とは、政府の決定によって突然、投資に関するルールが変更されたり、海外への資金移動が制限されたりすることです。

例えば、ある日突然、外国人投資家が保有する株式の売却が禁止されたり、利益の国外送金に高い税金が課されたりするケースが考えられます。

実際に過去には、ロシア市場で外国人の証券取引が停止されるといった事態も起きており、投資資金が長期間引き出せなくなる可能性もゼロではありません。

このような予測不可能なリスクは先進国では考えにくいため、特定の国に集中投資するのではなく、複数の国に分散させることが重要になります。

売りたい時に売れない流動性の問題

流動性リスクとは、市場の取引量が少ないために、売りたいと思った時にすぐに売れなかったり、想定よりもずっと低い価格でしか売却できなかったりする危険性のことです。

特に金融危機などで市場が混乱すると、投資家が一斉に売りに走り、買い手がつかない状況が生まれます。

先進国の株式市場であれば数秒で成立する取引が、新興国市場では数時間、あるいは数日かかっても成立しないこともあります。

これにより、損失が意図せず拡大してしまう可能性も出てきます。

このリスクを避けるためには、MSCI EM指数のように、比較的取引量が多く流動性の高い大型株を中心に構成されたインデックスファンドを選ぶのが一つの方法です。

指数の中身が特定国に偏るカントリーリスク

カントリーリスクとは、投資対象となる指数が、特定の国や地域に大きく偏っていることを指します。

例えば、新興国株式市場の代表的な指数である「MSCI エマージング・マーケット・インデックス」は、2025年時点のデータを見ると、中国と台湾、インド、韓国の4カ国だけで全体の約7割を占めています。

「新興国全体に分散投資している」と思っていても、実態は特定アジア諸国の経済や地政学リスクに資産の大部分を晒していることになります。

この偏りを認識した上で、インド単体のファンドを少し加えるなど、自分なりの調整を検討することも大切です。

米国の金融政策とドル高による影響

新興国市場の動向は、米国の金融政策、特に金利の動きと米ドルの価値に大きく左右されます。

米国が利上げを行うと、より安全で高い利回りを求めて、新興国に投じられていた資金が米国へと還流しやすくなります。

この資金流出は、新興国の株価下落と通貨安を同時に引き起こす要因です。

特に、ドル建てで多額の借金を抱える新興国企業や政府にとっては、ドル高が進むと返済負担が増大し、経済全体を圧迫することにつながります。

逆に、米国が利下げに転じる局面では、新興国に資金が向かいやすくなるため、投資のチャンスが生まれます。

FRB(米連邦準備制度理事会)の動向は、新興国投資のタイミングを考える上で最も重要な指標の一つなのです。

米国株偏重ポートフォリオを見直すための具体的なルール設計

市場の将来を正確に予測することは誰にもできません。

だからこそ、感情に流されず、どのような市場環境でも一貫した行動をとるための再現性のあるルール設計が、長期的な資産形成の成否を分けます。

ここでは、ご自身の資産を守り育てるための具体的な仕組みとして、「地域ごとの資産上限比率の設定」「定期的な資産配分の調整(リバランス)の条件」「為替ヘッジの有無を判断する基準」という3つのルールを解説します。

これらのルールをあらかじめ決めておくことで、市場の急騰や急落に一喜一憂することなく、冷静かつ合理的な判断を継続できるようになります。

地域ごとの資産上限比率の設定

資産上限比率とは、ポートフォリオ全体の中で、特定の国や地域の資産が占める割合の上限をあらかじめ決めておくルールです。

これがリスク管理の土台となります。

例えば、「米国株は株式資産全体の70%まで」「新興国株は10%まで」というように、具体的な数値を設定します。

この上限を決めることで、特定の市場が過熱して自分のポートフォリオが知らないうちにその市場に偏ってしまう、という事態を防ぐ効果があります。

このルールは、気づかぬうちに特定のリスクを取りすぎてしまうことを防ぎ、ポートフォリオ全体のバランスを健全に保つための防波堤となります。

定期的な資産配分の調整(リバランス)の条件

リバランスとは、値上がりして比率が高くなった資産を一部売却し、値下がりして比率が低くなった資産を買い増すことで、あらかじめ決めた資産配分に戻す調整作業を指します。

具体的な条件として、以下の2つの方法が考えられます。

リバランスを機械的に実行することで、「高くなった資産の利益を確定し、安くなった資産を買い増す」という合理的な投資行動が自動的に実現できます。

為替ヘッジの有無を判断する基準

海外の資産に投資する場合、株価だけでなく為替レートの変動も損益に影響します。

為替ヘッジとは、この為替レートの変動による影響を抑えるための仕組みです。

為替ヘッジの有無は、ご自身の投資スタンスによって判断が分かれます。

ヘッジあり・なしのどちらが良いかは一概に言えず、それぞれのメリットとデメリットを理解した上で選択する必要があります。

ご自身の投資期間やリスク許容度、今後の為替相場に対する考え方を整理し、主体的に判断することが重要です。

まとめ

この記事では、米国株に寄りがちなポートフォリオが抱える“見えにくい偏り”を整理したうえで、日本・欧州(EAFE)・中国・新興国といった米国以外の市場にも目を向ける重要性を解説しました。

ポイントは、将来を当てにいくのではなく、あらかじめ「どこに、どれだけ、どういうルールで投資するか」を決めておくことです。

新興国には成長の魅力がある一方で、通貨や政治、制度変更、流動性など先進国とは異なるリスクもあります。

だからこそ、最初から大きく張るのではなく、位置づけ(コアかサテライトか)を明確にし、上限比率や定期的な見直し(リバランス)、為替の扱いまで含めて“運用の型”を作ることが大切です。

まずは現状の資産配分を棚卸しし、米国偏重になっていないかを確認したうえで、米国以外を意図的に組み込む方針と、続けられるルールを決めて実行に移していきましょう。

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