確定申告は必要?不要?3つのケースを解説

コラム

毎年2月から3月にかけて行われる確定申告。すべての人が対象ではないものの、申告が必要なケースと不要なケースがあり、自分がどちらに該当するのかを正しく理解することが重要です。本記事では、確定申告が必要か不要かを判断するポイントを解説します。

確定申告が必要か不要かを判断するポイント

確定申告とは、1年間の所得と税額を計算し、納めるべき税額や還付される税額を確定させる手続きです。一般的には、給与所得者は勤務先が年末調整を行うため確定申告は不要ですが、一定の条件に該当する場合は申告が必要になります。

確定申告が必要になる主なケース

  1. 給与所得者でも特定の条件に該当する(例:年収2,000万円超、副業収入あり、年末調整で処理できない控除がある)
  2. 副業・事業所得が一定額を超えている(年間所得が20万円を超える場合)
  3. 株式投資の売却損益や配当所得がある(損失の繰越控除を利用する場合、配当と損益通算する場合など)

確定申告が不要な主なケース

  1. 給与所得者で年末調整が完了している(特別な控除や副業収入がない場合)
  2. 副業の所得が年間20万円以下(住民税の申告が必要な場合あり)
  3. 公的年金収入のみで一定額以下(65歳以上で年金収入400万円以下など)

以下では、確定申告が必要なケースと不要なケースについて、さらに詳しく解説していきます。


確定申告が【必要】なケース

ケース1:給与所得者で年収が2,000万円を超える

会社員や公務員などの給与所得者は、通常、勤務先が年末調整を行うため確定申告は不要です。しかし、年収(給与収入)が2,000万円を超える場合、年末調整の対象外となり、必ず確定申告が必要になります

なぜ年収2,000万円を超えると確定申告が必要なのか?

年末調整は、給与所得者の税額を簡易的に計算し、源泉徴収された税金と実際の税額を精算する仕組みです。ただし、年収2,000万円を超えると給与所得控除の適用計算が変わり、年末調整の対象から外れるため、自分で所得を計算し、確定申告を行う必要があります

また、年収2,000万円以上の人は以下の点にも注意が必要です。

  • 社以外の収入(副業、不動産所得など)もすべて申告する必要がある
  • ふるさと納税のワンストップ特例が利用できないため、確定申告で寄附金控除を申請する必要がある
  • 医療費控除や住宅ローン控除(初年度)なども確定申告で手続きをする

このように、高所得者は確定申告が必須となるため、事前に準備を進めておくことが重要です。


ケース2:副業収入が年間20万円を超える

会社員や公務員が副業を行い、年間の副業所得(収入-経費)が20万円を超えた場合、確定申告が必要になります。

副業における「収入」と「所得」の違い

  • 収入:副業によって得た売上や報酬の総額(例:アルバイト給与、ブログ収益、せどりの売上など)
  • 所得:収入-経費」で算出される、実際の利益

副業の収入が30万円あり、経費として12万円(パソコン代、通信費、書籍代など)を計上できる場合、所得は 30万円-12万円=18万円 となり、確定申告は不要です。しかし、経費が少なく所得が20万円を超えた場合は申告義務が発生します。

会社員の副業と確定申告の注意点

会社員が副業で得た収入がある場合、住民税の納付方法を「普通徴収(自分で納付)」にすれば、勤務先に副業のことが知られるリスクを軽減できます。

フリーランス・個人事業主の副業と確定申告

フリーランスや個人事業主の場合、副業所得がいくらであっても確定申告が必要になります。青色申告を選択すると最大65万円の控除が受けられるため、節税効果が期待できます。


ケース3:株式投資で売却損がある・または繰越損失がある

パターン1:2024年に売却損が発生した場合

2024年中に株式を売却し、損失(譲渡損失)が発生した場合、確定申告を行うことで税務上のメリットを得ることができます。

売却損が発生した際に考えられる対応方法

  1. 配当金との損益通算

    • 株式投資で得た売却損は、同じ年の配当所得と相殺することが可能です。
    • 2024年に50万円の売却損が発生し、20万円の配当所得があった場合、確定申告を行えば差額の30万円分の損失が残ります。
  2. 翌年以降への損失の繰越

    • 損失をその年の配当所得と相殺しきれない場合、最大3年間繰り越して、将来の売却益や配当所得と相殺できます。
    • たとえば、2024年に100万円の売却損が発生し、配当所得が20万円だった場合、2025年以降に80万円分の損失を繰り越すことができます。

確定申告が不要なケースと必要なケース

確定申告が不要な場合

  • 源泉徴収ありの特定口座 を利用しており、かつ 配当金の受け取り方法を「株式数比例配分方式」に設定している 場合、証券会社が自動で損益通算を行うため、確定申告は不要です

確定申告が必要な場合

  • 源泉徴収なしの特定口座や一般口座 で取引している場合は、売却損と配当所得の損益通算を行うために確定申告が必要になります。
  • 配当金の受け取りを「登録配当金受領口座方式」や「個別銘柄指定方式」にしている 場合は、証券会社で自動相殺されないため、自分で確定申告を行う必要があります。

パターン2:過去の確定申告で損失を繰り越している場合

過去3年以内(2021年~2023年)に確定申告を行い、株式の売却損を繰り越している場合、2024年の利益と相殺することで税負担を軽減できます。

繰越損失の適用方法

  • 2024年に株式の売却益や配当所得が発生している場合、過去の損失を適用することで課税対象額を減らし、税額を抑えることができます。
  • 2022年に50万円の損失を繰り越していて、2024年に30万円の売却益が発生した場合、2022年の損失と相殺することで、2024年の課税対象額はゼロになります(残り20万円の損失は2025年に繰り越し可能)。

確定申告をしないと損失繰越が無効に

  • 繰越損失を利用するには、毎年確定申告を行うことが必須です。
  • 2021年に損失が発生し、2022年・2023年と継続して確定申告をしていた場合でも、2024年の確定申告を怠ると2021年の繰越損失は無効となります。

繰越損失の適用順序

  • 損失の相殺は「古い年のものから順に」適用されます。
  • 2021年~2023年の損失を繰り越していて、2024年に利益が出た場合、2021年分の損失から順番に相殺されます。
  • 2021年分の損失を2024年の利益で相殺しきれなかった場合、その損失は消滅してしまいます。

パターン3:2024年に利益が発生し、過去の繰越損失がない場合

  • 2024年に株式を売却して利益(譲渡益)が発生し、過去の繰越損失がない場合、確定申告の必要性は取引口座の種類や配当金の有無によって異なります。

    確定申告が不要なケース

    • 源泉徴収ありの特定口座 を利用している場合、証券会社が自動的に税金を徴収するため、確定申告は不要です。
    • 配当金がなく、他の所得との損益通算を行う必要がない場合 は、基本的に確定申告をしなくても問題ありません。

    確定申告をした方が有利なケース

    • 所得税率が低い場合

      • 証券会社で源泉徴収された税率(20.315%)よりも、自分の総所得に適用される税率が低い場合、確定申告を行うことで税額を軽減できる可能性があります。
      • 間の総所得が少なく、適用される所得税率が5%である場合、確定申告を行うことで還付を受けることが可能です。
    • 他の所得と損益通算を行いたい場合

      • 一般口座や源泉徴収なしの特定口座を利用している場合、株式の売却益を他の所得と合算して確定申告を行うことで、控除を最大限活用できる可能性があります。
    • 住民税や健康保険料の影響を考慮する場合

      • 2023年以降、確定申告で配当金や株式の売却益を申告した場合、住民税の課税方法も連動して変更されるため、事前に税負担のシミュレーションを行うことが重要です。

確定申告が【不要】なケース

  • 会社員で年末調整が完了している(副業所得なし、控除の適用なし)
  • 副業の所得が20万円以下(ただし住民税の申告が必要な場合あり)
  • 公的年金収入のみで一定額以下(65歳以上で年金収入400万円以下など)

まとめ

確定申告が必要か不要かを判断する際は、自分の収入、控除の有無、株式投資の損益などを総合的に確認することが重要です。該当する場合は早めに準備を進め、適切な申告を行いましょう。