新NISAで「オルカン」「S&P500」一本買いのリスクと対策

コラム

新NISAを利用した「オルカン」や「S&P500」への一本買い投資に潜むリスクと、そのリスクを軽減するための分散投資戦略について詳しく解説し、インフレ時代における資産形成のポイントをお伝えします。分散投資の重要性や為替リスクへの対処法、新NISAを活用したポートフォリオの提案など、具体的な対策を解説します。

インフレに強い資産の必要性

日本では長年続いたデフレから、ついにインフレへの転換期を迎えつつあります。これまで「現金が安全」とされていた時代が終わりつつあり、現金の価値がインフレによって目減りするリスクが現実味を帯びています。インフレが進むと、物価は上昇し、現金の実質的な購買力が低下します。現時点で500万円の価値があっても、年3%のインフレが20年続けば、その実質的な価値は270万円程度にまで下がることになります。このような状況下で、現金を持ち続けることは実質的に資産が減っていくリスクを伴うのです。

インフレ環境下で資産価値を守るためには、現金以外のインフレ耐性のある資産への投資が求められます。インフレに強いとされる資産には、不動産や金(ゴールド)、さらには株式があります。これらは物価上昇によって価値が下がりにくく、物やサービスを生み出す実体的な価値があるため、インフレ時代においても安定した投資先として評価されています。

特に株式は、企業が収益を生み出す力を持つため、インフレ環境に強い資産とされています。株式投資は企業への所有権の一部を手に入れることを意味し、企業はインフレによって製品やサービスの価格を引き上げることで収益を維持または向上させることが可能です。これにより、インフレが進行しても株式の価値は高まりやすい傾向があります。

新NISAが提供するインフレ対策

新NISAは、インフレ時代に適した投資を行うための有効な手段です。政府はこのタイミングで新NISAという投資優遇制度を設け、国民に対してインフレ対策としての投資を促しています。これにより、積立投資を通じてインフレ耐性のある資産を保有し、長期的に資産価値を保護することが可能になります。

また、金融庁が発表した「老後に必要な2000万円問題」についても、多くの人が記憶にあるでしょう。しかし、現実的には2000万円では十分ではないという試算もあります。2024年時点の年金制度に基づくシミュレーションによると、夫婦での老後資金は約4500万~6000万円必要になると予想されています。これは、インフレによる物価上昇や、将来的な年金給付額の減少が考慮されているためです。

新NISAを使った資産形成の可能性

高額な老後資金を準備する必要があると聞くと、少し不安に感じるかもしれません。しかし、新NISAを効果的に活用することで、資産形成の道は開けます。つみたてNISAを使って毎月5万円ずつインデックスファンドに積み立てていけば、過去の実績では数千万円規模の資産を築くことも可能でした。S&P500や日経平均株価などに連動するファンドに投資した場合、30年後には大きなリターンが得られています。

仮に、S&P500に毎月5万円を30年間投資していた場合、約9000万円の資産が形成されていたというデータもあります。つまり、老後に必要とされる4500万円~6000万円の資産は、新NISAを活用することで十分に達成可能な範囲内だと言えるのです。

「オルカン」と「S&P500」への一本買いのリスク

新NISAで人気の高い投資信託として、「オルカン(オール・カントリー)」「S&P500」があります。「オルカン」は全世界の株式に分散投資を行う投資信託であり、世界中の市場の成長を享受できる点が魅力です。一方、「S&P500」は米国の代表的な500社に投資するインデックスファンドで、米国市場の成長に期待している人々に人気です

しかし、これらのファンドに一本化して投資することには注意が必要です。「オルカン」は全世界に分散投資しているものの、その中でも米国株の割合が約60%を占めています。米国市場が好調な時には有利ですが、もし米国市場が急落した場合、全体的なパフォーマンスが大きく下がるリスクがあります

同様に、「S&P500」への投資も、米国市場に過度に依存しているため、米国経済の変動に対して非常に敏感です。さらに、為替リスクも見逃せません。米ドル建ての資産であるため、円高が進行すればリターンが減少し、資産価値が目減りする可能性があります。このように、米国市場や為替の変動に依存するリスクが存在します。

リスクを回避するための分散投資戦略

これらのリスクを回避するためには、分散投資が欠かせません。地域や資産クラスを多様化することで、特定の市場に依存しすぎるリスクを軽減することができます。米国市場だけでなく、新興国や日本、欧州の株式にも資産を分散させることが考えられます。日本株は過去数十年にわたり低く評価されてきたものの、近年再評価が進んでおり、今後も成長が期待されています。

また、株式以外にも債券や不動産、コモディティ(商品)などの異なる資産クラスをポートフォリオに加えることで、リスクを分散することが可能です。これにより、株式市場が不調な時でも他の資産クラスがリスクを相殺する役割を果たします。

為替リスクへの対処方法

為替リスクに対しては、為替ヘッジ付きの投資信託を活用する方法があります。為替ヘッジを行うことで、円高による資産価値の下落を防ぐことができ、より安定したリターンが期待できます。また、円建ての商品をバランスよく組み入れることで、為替リスクを管理しながら投資することが重要です。

新NISAでのバランス型ポートフォリオの提案

新NISAを活用して分散されたポートフォリオを作成する際には、まず「つみたて投資枠」で基礎を築き、その上で「成長投資枠」を利用してより高リスク・高リターンの商品に投資するのが効果的です。ポートフォリオの50%を株式、30%を債券、20%を不動産やコモディティといった異なる資産クラスに分けることで、安定性と成長性のバランスを取ることができます。

まとめ

インフレ時代を迎える中で、「オルカン」や「S&P500」への一本買いはリスクを伴う選択肢です。特に地域的な分散や資産クラスの多様化が不十分な場合、米国市場や為替の変動に大きく左右されることになります。これを避けるためには、分散投資を活用し、地域や資産クラスを幅広く取り入れることが必要です。新NISAを効果的に活用し、リスクを管理しながら長期的な資産形成を行うことで、将来の経済的な安定を確保することができるでしょう。