防衛のためのマネロン対策関連銘柄5選

投資戦略

2028年にFATF(金融活動作業部会)の審査を前に、日本のマネーロンダリング対策は制度の整備から実効性のある「実装」フェーズへと完全に移行しました。

この変化は、取引モニタリングやAIスコアリングといった高度な技術を持つ企業に大きな事業機会をもたらし、株式投資におけるテーマとしての重要性も急速に高まっています。

この記事では、各社の強みや事業内容だけでなく、具体的な収益構造から専門家が実践する投資戦略、そして潜むリスクまで深く掘り下げて解説します。

日本のマネーロンダリング対策が待ったなしの状態である理由

2028年に予定されているFATF(金融活動作業部会)による対日相互審査を目前に控え、日本の金融機関はマネーロンダリングおよびテロ資金供与対策(AML/CFT)の強化が待ったなしの状況です。

これまでの「制度整備」の段階から、実効性のある「実装・運用」へとフェーズが移行しており、この変化を技術で支える企業に大きな投資機会が生まれています。

FATF(金融活動作業部会)の概要

FATF(金融活動作業部会)は、マネーロンダリング対策やテロ資金供与対策の基準を作成し加盟国の取り組みを評価する国際機関です。

その重要性は、FATFが設定する基準が国際的な金融取引における信頼性や安全性を直接左右するからです。

FATFは1989年に設立され、現在では約200カ国がその基準に基づいて国内法を整備しています。

各国は定期的に相互審査を受け、その対応状況が評価されます。

2028年に予定されている日本の審査も、その一環となります。

FATFの基準に従うことは、国際金融市場での信用を築くために不可欠です。

この基準への対応が遅れれば、国際的な制裁や信用低下に繋がる可能性が高まります。

制度から実装へ、日本の評価における課題点

日本におけるマネーロンダリング対策の最大の課題は、その「運用(実効性)」が十分でないという点です。

法律や制度は整備されているものの、具体的な実行面での課題が多く、国際基準を完全に満たしていないのが現状です。

具体的には、取引モニタリングシステムの導入が進んでいない金融機関も多く、AIを活用したリスクスコアリングや継続的な顧客管理(KYC)も不十分です。

このため、2028年の再審査に向けた対策強化が急務とされています。

共同化と高度化はコストを削減しつつ、金融犯罪対策の精度を上げるための鍵となります。

これには複雑なシステムの実装が必要で、日本の金融機関はそれに向けた技術開発を急いでいます。

2028年対日相互審査に向けた国内金融機関の動き

2028年のFATF審査に向けて、日本の金融機関はシステム構築と体制整備を積極的に進めています。

特に、AIを活用した取引モニタリングや、KYCプロセスの自動化は注力領域となっています。

金融庁もガイドラインを強化し、金融機関があるべき対策を実装・運用するための支援を行っています。

これにより、多くの金融機関が新しい技術を導入し、マネーロンダリング関連のリスクを低減させつつあります。

しかし、全ての金融機関が一斉に対応できるわけではなく、中小規模の金融機関では人材や予算の不足が大きな課題です。

そのため、業界全体での「共同化」が一つの解決策として進められています。

成功の鍵となる「共同化」と「高度化」

マネーロンダリング対策における「共同化」「高度化」が成功の鍵となる理由は、これらによってコスト削減と効率向上が図れる点にあります。

共同化とは、複数の金融機関が共通の基盤を利用してコストを分担し、精度や安全性を確保する取り組みです。

日立製作所やNECは、既にそのプラットフォーム構築力を活かして多くの金融機関に共同化を提案し、具体的なシステムを実装しています。

この共同化は、特に中小金融機関にとって有用で、技術的なハードルを下げ、リスク管理を強化します。

高度化とは、高度なアルゴリズムやAIを活用してモニタリングシステムの精度を向上させることです。

これにより、疑わしい取引をより早期に、確実に検知できるようになり、金融機関の運用負担を軽減します。

日本のマネーロンダリング対策の進展は、共同化と高度化によって大きく左右されることが明らかです。

これにより、金融機関の安全性が確保され、国際的な信用も維持されるのです。

マネーロンダリング対策における3つの収益機会

マネーロンダリング対策は、金融業界において重要な役割を果たしています。

この分野での収益機会は、「検知」「特定」「実装・運用」の3つの領域に分けられ、それぞれが大切な要素を担っています。

不正を「検知」する領域の事業

不正を検知する領域は、マネーロンダリング対策の第一歩です。

不正取引の早期発見は、金融機関にとってリスクを未然に防ぐために非常に重要です。

この領域では、取引モニタリングサービスが中心となっており、AIや機械学習を使ったリスクスコアリングが活用されています。

例えば、多パラメータ行動解析を用いることで、異常なパターンを迅速に特定し、不正アクセスを防ぐことが可能です。

主体を「特定」する領域の事業

この領域では、「KYC(顧客確認)」が鍵となります。

金融機関は、取引の信頼性を担保するために誰が本当の主体かを特定する必要があります。

これにより、反社リストや制裁リストと照合し、不正行為の予防が可能となります。

最近では、暗号資産の追跡技術も重要視されており、これらの技術が金融犯罪の抑止に寄与しています。

システムを「実装・運用」する領域の事業

システムの実装・運用は、効率的なマネーロンダリング対策の基盤となります。

この領域において、ワークフローの最適化や共同化基盤の構築が求められています。

システムの安定した運用は、金融機関の信頼性を高めるために必須であり、持続的な利益をもたらします。

ライセンス・SaaS・アップセルによる収益構造

マネーロンダリング対策を行う企業にとって、収益機会はライセンス契約、SaaSモデルの提供、さらにアップセルによって生まれます。

特に、SaaSモデルは初期導入費用を抑えつつ、使う分だけ支払う形態であり、安定した収益が期待できます。

また、既存の顧客に新たなモジュールや機能を提案するアップセルも、収益向上に大きく貢献しています。

マネーロンダリング対策における各領域での事業展開は、企業にとって持続的な成長をもたらす重要な収益機会となります。

金融業界全体の信頼性を高めるために、これらの領域に積極的に取り組むことが不可欠です。

注目すべきマネーロンダリング対策関連銘柄5選

マネーロンダリング対策が急務とされる中、特に注目すべきは技術でそれを支える企業です。

以下では、金融犯罪対策で活躍が期待される5つの銘柄について掘り下げていきます。

これらの企業は、業界の未来を切り開く可能性を秘めています。

※数値は、9月24日時点。

コード 銘柄名 株価 配当利回り
153A カウリス 2,390円 記載なし
6501 日立製作所 4,030円 1.09%
6701 NEC 4,766円 0.67%
9682 DTS 5,300円 2.61%
9719 SCSK 4,560円 2.03%

カウリス(153A)- 不正アクセス検知と事業の横展開

不正アクセス検知を主力とするカウリスは、独自の行動解析技術を誇ります。

これにより、多様なパラメータを用いたリアルタイムのモニタリングが可能です。

また、カウリスのサービスは電力会社と連携し、口座の悪用防止にも大きく貢献しています。

SaaS化の促進により、継続課金モデルが拡大しており、安定した収益基盤を築いています。

カウリスは、不正検知分野でのリーダーシップをさらに強化することでしょう。

日立製作所(6501)- 共同化プラットフォームを築く社会インフラ構築力

日立製作所は、金融と社会インフラの統合において、共同化プラットフォームの構築力が際立ちます。

銀行業界を軸に、AML(アンチマネー・ロンダリング)実証の拠点としてもその存在感を示しており、大規模プロジェクトでの収益化が進んでいます。

日立製作所は、プルーフ・オブ・コンセプト(PoC)から商用化への移行速度で先行しており、将来的な市場展開においても有望です。

NEC(6701)- 全国銀行協会も採用するAIスコアリングの実績

NECは、銀行業界におけるAIスコアリング・システムの導入で高い評価を得ています。

その技術力により、継続的な運用と共同基盤を支える能力が強化されています。

NECのシステムは、新たなモジュールの追加を通じて、より柔軟なアップセル戦略を可能にしています。

さらに、金融インフラにおける長年の実績が堅実な収益基盤を支え、その市場影響力の拡大が見込まれます。

DTS(9682)- 暗号資産追跡も網羅する「AMLion」の優位性

DTSが提供する「AMLion」は、暗号資産の追跡とリスク管理を包括的にカバーしています。

同システムは、TRM Labsとの連携により、より深いレベルでのリスクコントロールを実現しています。

また、証券やカード、暗号資産事業者へのクロスセルが進行しており、収益拡大のカタリストとして期待されています。

DTSは、AML分野においてますます重要な役割を果たしていくでしょう。

SCSK(9719)- 中期経営計画の柱となる金融犯罪対策の共同化支援

SCSKは、取引モニタリング技術における「BankSavior」を中心に、多くの金融機関での導入実績を持っています。

金融犯罪対策を中期経営計画の基本戦略とし、サービス範囲のさらなる拡充を図っています。

また、子会社の特殊許認可活用による差別化戦略も進行中で、共同化支援によるコストと精度の最適化に寄与しています。

このような取り組みが、将来のマーケットリーダーとしての地位を強固にする要因となるでしょう。

これらの銘柄は、日本の金融業界において、AML/CFT強化の重要な役割を担う存在です。

それぞれの企業が持つ技術力と収益モデルが、今後の市場でどのように展開されるかに注目が集まっています。

成功に導くための投資戦略とリスク管理法

投資戦略においては、多様な企業を組み合わせたポートフォリオを構築することが重要です。

特に、大手システムインテグレーター(SIer)と専門SaaS(サービスとしてのソフトウェア)企業を組み合わせることで、安定性と成長性のバランスを取ることが可能です。

大手SIerと専門SaaS企業を組み合わせたポートフォリオ構築

大手SIerは、金融市場における広範なネットワークとインフラストラクチャの構築能力を持っています。

一方、専門SaaS企業は、特定の技術革新による高い成長ポテンシャルがあります。

このような組み合わせによって、投資リスクを軽減しながら、収益性を高めることができます。

具体例として、日立製作所やNECのような企業は、大手SIerとしての信頼性に加え、AIスコアリングなどの先進技術を持っており、安定した収益を見込めます。

投資判断で確認すべき5つの重要業績評価指標

投資判断においては、複数の業績評価指標を確認することが必要です。

まず、ARR(年間反復収益)は、事業の安定性を示す重要な指標です。

次に、導入社数は市場の信頼性と需要を表します。

また、共同化案件の運用段階は、システムの実用性を確認するためのポイントです。

さらに、モデル精度の更新頻度は、技術革新への取り組みを示します。

最後に、外部提携の進捗も、企業の成長力を評価するために重要です。

投資前に把握すべき4つの主要なリスク

投資においては、リスク管理が欠かせません。

規制や審査スケジュールの遅延は、事業計画に影響を及ぼす可能性があります。

また、誤検知や過検知によるオペレーション負荷は、顧客満足度に悪影響を及ぼすことがあります。

さらに、個人情報や越境データの規制強化は、コスト増の要因となります。

最後に、単発案件偏重の場合、SaaS比率の伸び悩みが収益に不安定さをもたらす可能性があります。

成功を収めるためには、信頼性のある大手企業と成長性のある専門企業を組み合わせたポートフォリオを構築し、必要なリスク指標を継続的に監視しながら投資を行うことが不可欠です。

規制イベントなど外部要因も含めたリスクを慎重に管理しつつ、確実なデータに基づいた投資判断を心がけることが求められます。

まとめ

マネーロンダリング対策は、2028年のFATF審査を見据え、取引モニタリングやKYCなどの技術面での強化が急務です。

以下の銘柄が注目されます。

これらの企業を含む分散投資を行い、リスク管理をしながら確実な投資を進めてください。

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